消えた名画館の記憶を箱に詰めて。ニュージーランドの映画館主が復活させた「懐かしのおやつ」

ニュージーランドのクライストチャーチで「デラックス・シネマ」を営むジェレミー・スチュワート氏は、映画館にまつわる古き良き伝統を現代に蘇らせようとしています。かつて映画館の定番だったおやつといえば、オレンジ風味のチョコレート「ジャファ(Jaffas)」を、通路でゴロゴロと転がすのが楽しみの一つでした。

しかし、メーカーの製造終了により、ジャファは店頭から姿を消してしまいました。映画ファンからの熱心な要望を受けたスチュワート氏は、別の菓子メーカーと協力し、独自の「インターミッション・トリーツ(休憩中のおやつ)」としてジャファを復活させました。

ただおやつを売るだけでなく、氏はこの企画を「失われたクライストチャーチの映画館コレクション」へと昇華させました。かつて街の文化の中心でありながら、今は無き「リージェント」「サボイ」「エイボン」「ウェストエンド」という4つの名画館に焦点を当てた特製ボックスを制作したのです。 それぞれの箱には、各映画館の歴史的なアーカイブ写真やエピソードが記されています。例えば、1979年に火災で焼失したリージェントや、アールデコ様式の壮麗な建築で知られたエイボンなど、往時の物語が詰め込まれています。 「誰にでも映画館の思い出があります」と語るスチュワート氏は、単なる商品の販売にとどまらず、この小さな箱を通じて街の記憶を保存しようと試みています。箱に付いたQRコードからは各館の歴史サイトへアクセスでき、訪れた人々が自分だけの思い出を投稿できる仕組みにもなっています。映画館という場所が人々の心に残した温かな記憶を、おやつと一緒に次世代へと繋ぐ試みです。










