中国の地方都市に根を下ろすアート。美術館「泥鰌《どじょう》」が紡ぐ住民との共創

中国の浙江省にある慶元県は、シイタケ栽培や鉛筆製造が盛んな人口約14万人規模の静かな地方都市です。この町の中心部で2023年に設立された「泥鰌美術館(AMPL)」が、今、地域コミュニティと現代アートの新しい共存の形として注目を集めています。 同館のユニークな点は、その立地と運営方法にあります。美術館は地元のセラミック(青磁)博物館が入る建物の2階を改装したもので、同フロアには市役所の婚姻届窓口や図書室が併設されています。館名は、泥の中で生きる小さな魚「ドジョウ」に由来しており、都会と地方の境界線上で、住民の日常に寄り添うアート活動を目指しています。

大規模なスタッフを持たない同館は、地元の溶接工や電気技師といった職人たちと協力して展示を設営しています。当初は現代アートの展示経験がなかった彼らも、今では美術館運営に欠かせない「パートナー」となりました。 特筆すべきは、2026年に開催された展示『工場少女(Factory Girl)』です。これはアーティストのジェン・チュエ氏が、浙江省の別の町にあるクリスマス用品工場で実際に働きながら制作したドキュメンタリー性の強い作品です。展示のオープニングでは、上海や杭州から来たアート関係者と地元住民が食卓を囲み、美術館の名前の由来でもあるドジョウの鍋をともに味わいました。 「都市から地方へ文化が流れる」という一方通行な見方ではなく、地域の技術や人間関係を組み込んでいく美術館の試みは、中国の地方都市における文化のあり方に、新たな可能性を示しています。










