シリアから祖国へ。アルメニアの伝統工芸を守り抜いた「2トンの職人道具」

アルメニアの首都エレバンにある民芸美術館で、シリア系アルメニア人の銅細工職人たちが愛用した道具のコレクションが展示され、注目を集めています。この展示の主役は、19世紀から20世紀にかけて受け継がれてきた140個もの金床(かなとこ)や、大小さまざまなハンマー、彫刻刀などの貴重な道具たちです。

写真の鳥をモチーフにした精巧な装飾品のように、職人たちはかつて日用品から教会用の祭具まで、圧倒的な技術で銅や銀の工芸品を生み出してきました。 これらのコレクションは、シリアのアレッポで活動していた最後の名工、ホヴァネス・カレムケリアン氏のもの。1993年からアレッポで教鞭をとっていた画家であり民族学者のフラズダン・トクマジャン氏は、ホヴァネス氏と深い親交を結び、いつかアルメニアにこの技術を継承するための学校を開こうと夢を語り合っていました。2013年、内戦などの厳しい状況の中、約2トンにも及ぶこれらの道具を命がけで祖国アルメニアへと運び出しました。 かつては家族や親族の工房で大切に守られてきたこれらの道具には、持ち主の名前が刻印されたものも多く、職人たちの歴史そのものが詰まっています。残念ながら、夢半ばでホヴァネス氏は2015年に亡くなりましたが、トクマジャン氏は彼らの功績を後世に残すため、一族の200年にわたる歴史をまとめた百科事典のような書籍の出版も目指しています。現在、展示会には多くの観光客や学生が訪れており、失われゆく伝統の美しさと、それを守り抜こうとする人々の情熱が改めて評価されています。
編集部より
金属細工には独特の美しさがありますよね どうか途絶えないで欲しいです












