無断使用から30年、世界中で愛された「あの子守唄」の歌い手と家族の物語

1992年にリリースされ、世界的大ヒットを記録したディープ・フォレストの楽曲『スウィート・ララバイ』。幻想的な曲調で世界を魅了したこの曲には、実は数十年間にわたり隠されてきた「持ち主」の存在がありました。曲の冒頭で流れる印象的な歌声は、ソロモン諸島マライタ島出身の女性、阿布那川さんが1969年に録音した子守唄『ロログウェラ』でした。両親を亡くした幼い弟を慰める、哀切を帯びたこの伝統歌は、いつしか「アフリカ音楽」として紹介されるようになり、家族の元には何の対価も届けられぬまま、世界中で商業的に利用され続けてきたのです。

事態が動いたのは、シドニーのミュージシャン、マット・シンミン氏が自身のヨガクラス用の楽曲にこのサンプルを使用しようと試みたことがきっかけです。彼は音源のルーツを辿る過程で、この歴史を知り衝撃を受けました。彼はその後8年をかけて彼女の家族を探し出し、ドキュメンタリー映画『Searching for Afunakwa』を制作。映画の中で家族は、ラジオから流れる『スウィート・ララバイ』を聴いた時の複雑な心境を語ります。特に、映像の中でアフリカの人々が映し出されていたことに対し、孫の一人は「誰が歌い手で、誰がこの曲の持ち主なのか、正当に認めるべきだ」と訴えています。

この映画の公開を受け、ディープ・フォレスト側はYouTube上のクレジットを修正し、彼女の功績を明記する対応を始めました。さらに、彼女の孫たちは「アフラナクワ基金」を設立し、楽曲が正当に評価されることで得られる利益を、故郷の教育や医療環境の改善に充てるという新たな一歩を踏み出しています。音楽が海を越えて響き渡る現代、失われたルーツを取り戻す試みは、アーティストと地域の関係を問い直す大きな転機となりそうです。













