愛か、騒音か。ベトナムの秋を象徴する「ホアスア」の甘く強烈な香り

ベトナムの秋を告げる「ホアスア(Milkwood)」という木をご存知でしょうか。かつて植民地時代にフランス人が街路樹として植えたのが始まりとされ、現在ではハノイをはじめとするベトナム各地の街角で、秋になると一斉に白い花を咲かせます。

この花には二つの顔があります。一つは、その詩的な美しさと甘い香りに酔いしれ、懐かしさを感じる「秋の風物詩」としての姿。ベトナムの国民的な秋の歌にも登場するほど、地元の人々にとっては「記憶の香り」そのものです。しかし、もう一つの顔はあまりに強烈。夜になると頭が痛くなるほどの濃厚な香りを放つため、「うるさい」「たまらない」と嘆く住民も少なくありません。 過去には、あまりの強烈な香りに耐えかねた住民が自治体に苦情を申し立てたり、果ては植え替えを求めて訴訟に発展したケースもあるほどです。あまりに高密度に植えられたことで、心地よいはずの香りが生活の負担になってしまった例もあります。

インドや台湾など、同じくこの木が生息する国々でも、その香りに対する受け止め方は極端に分かれています。ある場所では「立ち止まって楽しむべき香り」とされ、またある学校では生徒への影響を考慮して伐採されるという極端な対応がとられたこともあります。 今では街の風景の一部となったこの木々と、どう共生していくか。あまりに密集して植えられた場所では間隔を空けるといった工夫が求められていますが、住民たちは今日もまた、この甘く、そして時に悩ましい香りと共に秋の訪れを感じています。













